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ささくれた名盤などについてのメモ他

Starring Rosi

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Starring Rosi / Ash Ra Tempel (1973)

誰がAsh Ra Tempel(以下、「アシュラ」という。)をこんな音にしてしまったのか通勤しながら考えてみましたが、考えれば考えるだけこちらが一方的に損するような気がするのでやめました。人道的な視点から鑑みても、ウクライナの情勢が悪化の一途を辿っている現在、そんな無駄なことに頭を悩ませている場合ではないのです。(この問題についてはいずれ詳しくお話しましょう)

さて、アシュラといえば、強烈なインプロ一発勝負の初期バンド期、メンバーが次々と脱退しゲッチング一人だけとなったことを逆手に取ったギターマントラ「Invasion Of Electric Guitar」、浮遊する人力テクノ「E2-E4」(ゲッチングのソロ名義)を思い浮かべる人がほとんどであり、「おれ、クラウトロックちょっとかじってっからサ」という方は、LSDの海で屈強な男たちが一心不乱に御輿を担ぐが如き戦慄的カットアップセッション「Seven up」を推すでしょう。
そこで、「おれ、クラウトロックちょっとかじってみたら中身腐っててサ」という僕が偏見で推すのは、5th「Starring Rosi」です。


このアルバム、上記のような妙ちきりんでアッパラパーなムードの泥酔歌謡か、またはしみったれたアコースティックな曲のどちらかしか収録されておらず、それまでのアルバムで見せていたファズでごり押ししまくる鬼気迫るインプロ色は皆無。初期ファンを全力でずっこけさせます。
しかし、このアルバムの影の主役は、当時のゲッチングの彼女の薄気味悪い呟き。その呟きの清々しいまでの素人臭さ!


このアルバムがアシュラファンをドン引きさせている原因こそこの薄気味悪い呟きにあると思ってしきりですが、アシュラの冠を外して素直にこのアルバムを聴くと、素直に完成度は高いし、何よりこのうたものポップ路線は素直にすごく聴きやすい。また、もはや彼女に呟かせるか自らギターを弾くかしか手段がなかったゲッチングながら、聴き耳を立てて聴いているとワンコードの反復フレーズの中から催眠的なリフの萌芽を見出すことができます。ゲッチングは、このアルバムの2年後に廃人同然の体であのギターマントラを完成させるわけなので、この時点ですでに志向はしていたということでしょうか。志向はしていながら女に逃げたゲッチング。これこそ男の鑑と呼ばずしてなんと呼ぶか!

求めれば求めるほど、求めるものと違う音に変貌していくことこそクラウトロックの魅力の一つで、そのような急激な変化に翻弄されつつも「あれ、これもいいかも」と思わされることで聴覚がより鋭敏になっていく。クラウトロックを好んで聴くような方は誰もがこの経験を経て、ドツボにはまり込んでいくのです。
このアルバムは全てのアシュラファンの黒歴史として存在している代物ですが、うたものポップファンのあなたにこそおすすめいたします。アシュラファンのあなたはあんパンでも食っててください。


※ ちなみに、さだまさしの新曲を喜太郎(本名、高橋正則)がカバーしたかのようなこの曲のニーズの見えなさが大好きです。
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